機密性の高いマニュアル業務をBlue Prismで変革― プロメトリックのRPA導入

PROMETRIC blue prism

プロメトリック株式会社は、世界180カ国で試験運営サービスを展開する米国プロメトリック社の日本法人として1991年に設立。日本国内では現在、50以上の法人・団体からの依頼を受け、コンピューター・インターネットを利用した500種類以上の試験を実施。日本国内では約120都市に設けた試験会場を通じて年間200万件超の試験を配信し、関連する評価分析サービスも提供している。

導入した背景とポイント

  • 今後の事業拡大
    を見据えて
    業務処理能力の
    強化

  • 人手を介さない
    処理で正確性と
    セキュリティを
    確保

  • 処理速度が
    最大30倍に向上

事業拡大で、マニュアル作業の効率化が急務に

左から、高島 正晃氏(プロメトリック株式会社 Associate Controller)、青山 俊昭氏(同グループ Vice President, CFO for Japan, Head of Strategic Planning)
左から、高島 正晃氏(プロメトリック株式会社 Associate Controller)、青山 俊昭氏(同グループ Vice President, CFO for Japan, Head of Strategic Planning)

就職活動中の適性検査や、語学能力の測定、専門知識を問う業界別の資格などでは、各地の「テストセンター」と呼ばれる会場で、コンピューターを使って回答する試験(CBT=Computer-basedTesting)が行われる。プロメトリック株式会社は、このCBTの実施運営において長年の実績を持つ大手だ。

日程を柔軟に設定でき、集計も速いなど主催者・受験者双方にとってメリットが大きいCBTへの移行は、国家試験を含めて増加の一途をたどっている。今後の事業拡大を見据える同社では、業務処理能力の強化が急務となっていた。

「業務の棚卸しを行い、特に担当者の負担が重いと分かったPC上での反復作業については、さまざまな効率化を検討、実施しています。ただ、一部の業務については、試験問題などの機密情報や個人情報を扱うため社外に委託するのは難しく、システムを組んで自動化しようにも、試験ごとに異なる主催者が作成したデータを処理するため、自社だけで進められないなど、問題がありました」と、同社の事業戦略を統括する青山 俊昭氏(Vice President, CFO for Japan, Head of Strategic Planning)は振り返る。

「RPAが最善の選択」

こうした状況を踏まえ、同社が見解を求めたコンサルティングファームからの回答は「手作業によるPC操作を、そのまま自動実行に移行できるRPA(Robotic Process Automation)の活用」というものだった。

「実は私自身、前職で業務改善担当者として、マニュアル業務のRPA化を行ったことがあります」と明かすのは、プロメトリック社で業務改善の実務を担う高島 正晃氏(Associate Controller)。再びRPAと接点が生まれた当時の事情について同氏は、次のように解説する。

「今回の課題解決にもRPAが使えそうなことは経験から分かっていましたが、想定しうる他の選択肢とフラットに比べてもRPAが最善の選択との意見をいただき、確信を深めました」
「実際に活用を進める際のパートナーとして、RPA導入支援の実績が豊富な双日テックイノベーション株式会社を紹介され、さっそく同社に相談したところ、国内外のRPA製品で特にセキュリティ性能が充実し、クリティカルな用途に適したBlue Prismを推薦いただいたことから、2020年8月に同製品の導入が決まりました」

実装しやすいRPAで迅速にスケール

「セキュリティ機能に定評があるBlue Prismであれば、安心して業務を自動化できると考えた」と説明する高島氏
「セキュリティ機能に定評があるBlue Prismであれば、安心して業務を自動化できると考えた」と説明する高島氏

RPAを用いた業務自動化の手法は一般に、システム構築に比べて構築と改修が容易なことが特長とされている。

加えてRPAでは、それまで画面上で人が行ってきた作業手順をそのまま自動実行できるため「やり方を変える」ことに伴う調整を最小限に留められるのも大きなメリットだ。

「私たちの業務では、試験の主催者である各団体のシステムへのアクセスが欠かせません。業務の自動化にあたり、もしシステム変更を行おうとすれば、全ての関係先から了承と協力をいただくまでには相当な時間と労力を割く必要があったでしょう。

しかし今回はRPAを用いて、関係先の了承を得たうえで、従来の手作業による接続手順をほぼそのまま引き継いで自動化しています。このため素早く実用化に入ることができ、活用領域も迅速に拡大できました」(青山氏)

正確性・セキュリティ・作業時間を同時に改善

数あるRPA製品の中で、Blue Prismは特に「きめ細かいアクセス権の設定が可能」「改ざんできない形で操作履歴が全て残る」といったセキュリティ機能に定評がある。こうした高い信頼性が、時に人生を左右する「試験」の情報を扱うのにふさわしいと判断された。

「手作業を自動実行に切り替えることで、作業自体を高速化できるのはもちろんですが、狙いはそれだけにとどまりません。単純ミスや恣意的な操作が入る余地をなくせる点や、これにより何重にもわたる作業のチェックを簡素化できる点にも期待しました」 (高島氏)

間違いの許されないミッションに対応した支援

「双日テックイノベーション社からは、検証から実装に至る各段階で的確な提案をいただいた」と説明する高島氏
「双日テックイノベーション社からは、検証から実装に至る各段階で的確な提案をいただいた」と説明する高島氏

プロメトリック社は今回、Blue Prismが体系化した業務自動化の方法論「RoboticOperating Model(ROM)」を理解し、社内活用と導入支援を通じた独自のノウハウも持つ双日テックイノベーションに導入初期の開発運用を依頼。スムーズな立ち上げに成功した。

双日テックイノベーションの導入支援について、プロメトリック社の高島氏は「Blue Prism関連の知識や経験が豊富なのはもとより、試験の主催者や各会場と連携する当社のシステム環境を踏まえ、検証から実装に至る各段階で的確な提案をいただきました」と評価。青山氏も「間違いが絶対に許されず、機密保持が極めて重要な試験運営の特性を理解いただき、ダミーデータを用いたオンサイト開発などで対応くださったことに感謝しています」と話す。

試験運営の核となる業務で処理速度が30倍に

Blue Prismによる業務自動化の効果は「人件費換算で既に導入運用費用を大きく上回っている」と説明する青山氏
Blue Prismによる業務自動化の効果は「人件費換算で既に導入運用費用を大きく上回っている」と説明する青山氏

今回のBlue Prism導入は、まず「試験問題データの転記」「各試験の座席枠確保」の2業務を対象とした。

このうち、出題順変更などに対応できるよう試験問題原本のExcelデータを数百項目に分割して配信システムに転記する業務では、手作業によるミスを防ぐため途中何度も繰り返していた確認作業の大半が不要となり、これまで月10.5時間を要していたのが同22分と、約30倍のスピードアップを達成。試験準備の次工程に早く移ることができるようになり業務全体の効率化が進んだ。

また、試験日程に合わせて全国のテストセンターの座席枠を確保する作業では、専用システムを通じた予約作業の自動化で月120時間から同12時間への時間短縮を実現。CBTへの移行が年度途中で急きょ決まった、ある国家試験の実施にもBlue Prismが一役買う形となった。

「従来であれば社内総出の人海戦術でなければ到底間に合わなかったところを、通常の人員配置のまま、無事に乗り切ることができました」(高島氏)

社員の手作業に頼るほかなかった重要業務を自動化したことで、初年度から投資効果も現れており、人件費換算では既に導入運用費用を大きく上回るメリットが得られているという。

日本法人からグローバルに知見を共有

Blue Prismによる業務の自動化は、自社の狙いや事情に理解のある専門家に協力してもらうことで、投資以上の効果が期待できる。
Blue Prismによる業務の自動化は、自社の狙いや事情に理解のある専門家に協力してもらうことで、投資以上の効果が期待できる。

先行した2業務に続いて、同社はさらに8業務をBlue Prismで自動化する計画。これにより、合計で年1万4,000時間相当の人的リソース創出を見込み、うち1つの業務では、自動化に併せて本部に作業を集約することで、試験会場ごとに確保していたスタッフの作業時間をほかの業務に割り当てられる見通しだ。

今後の展望について、青山氏は「ストレスフルな繰り返し作業から解放されて得た時間をサービスレベルの向上に充てられるようになっただけでなく、確かな実績に基づいて運用範囲の拡大をグローバルでも検討できるようになりました。今回取り組んだ問題配信関連を含め、世界各地のプロメトリックで共通するオペレーションについては、私たちが得た業務自動化の知見を広く共有していくつもりです」と語る。

「対象業務の効率化と同時にセキュリティ向上も実現できるのは、Blue Prism活用の大きなメリット。自社の狙いや事情に理解ある専門家と共に始めれば、きっと投資以上の効果が得られるでしょう」とコメントする高島氏は「私たちも引き続き専門家と協力し、業務処理能力の更なる強化を目指します」と意欲をみせている。

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