新しい技術が古いものを復活させるという考えは、1960年代に社会学者マーシャル・マクルーハンが提唱した「テトラッド」理論によって有名になりました。この考え方を現代の教育に応用してみましょう。
昔の先生が生徒と対話しながら教えたように、ChatGPTという人工知能が優しく会話に応じ、質問に答えてくれます。Blue Prismというロボティックプロセス自動化(RPA)のツールに関する質問も、ChatGPTを通じて探求できます。一緒に楽しいBlue Prism開発を経験し、新しい学びの形を体験しましょう。
学びの新時代:AIによる対話型教育
対話型教育の歴史は古く、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの時代から続いています。この古典的な教育手法は時代とともに変遷していきましたが、現代の先進的なAI技術によって再び脚光を浴びています。
ChatGPTはその一例であり、AIメンターとして初歩的な内容から高度な問題に対しても、何度でも何でも聞いてくれる親身な支援を提供します。
人間の教育者と異なり、AIメンターは怒ることなく、疲れることなく、質問に応えてくれます。これは、特に初心者が恥ずかしがらず何度も質問できる環境を提供してくれる点で非常に有益です。
日本の古い言葉に「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」というものがありますが、AIメンターとの対話はまさにこの精神を具現化しています。何度でも気軽に質問できる環境は、学びのプロセスを加速し、深化させるでしょう。
ChatGPTは、ロボティックプロセス自動化(RPA)の開発を行う担当者への強力な支援ツールとしても機能します。特にBlue Prismの開発においても、開発者の質問に快く応じてくれます。保守、運用についても、同様です。
ChatGPTとの効果的な対話:品質とセキュリティのガイド
私たちが文字で対話する相手が人間であると感じるのは、文章が流暢で理解しやすいからです。今日、ChatGPTのようなAI技術は、この人間らしい文章の生成を可能にしています。
ChatGPTは、高度なトピックにも対応し、人間との対話に匹敵する体験を提供します。しかし、ChatGPTは時に誤った情報を生成することがあります。この現象はハルシネーションとして知られており、AIが存在しない事実や誤ったデータを生成することを指します。人間が夢の中で夢であることに気づかないように、AIがハルシネーションに気づくのも困難です。利用者は情報の正確性を常に確認する責任があります。
ChatGPTとの対話がより有益で安全になるよう、以下の観点を考慮する必要があります。これらは、対話の品質とセキュリティを確保し、信頼性を高めるための基本的なガイドラインです。
- 情報の検証: 重要な情報は必ず信頼できる情報源で確認するべきです。
- 個人情報の取り扱い: 機密情報や個人情報を共有しないよう注意が必要です。
- 企業ポリシーの遵守: 企業内での使用ルールやガイドラインを守り、適切な利用を心掛けましょう。
対話の精緻化:ChatGPTへのカスタム指示の活用
ChatGPTと対話する際、シンプルな質問だけでなく、特定の指示をChatGPTへの質問(プロンプト)に組み込むことができます。これにより、精緻でコンテクスト(文脈)に応じた回答を引き出すことが可能になります。このような指示を、本記事では「演出指示」と呼ぶことにします。
ChatGPTのカスタム指示(Custom Instructions)機能を使用すると、演出指示を別の形式で付与することもできます。これは、プロンプトから指示を分離し、特定の応答を促すのに役立ちます。カスタム指示機能が使えない場合でも、プロンプト内に直接指示を書いて同じ効果が期待できます。
例えば、Blue Prismの開発に関連した技術的な質問をしたい場合、ChatGPTに「Blue Prismの専門家として回答してください」と指示することができます。このようにして、特定の視点や背景知識を持つ回答を得ることができます。また、Blue Prismの基盤が.NETであることなどの具体的な情報をChatGPTにインプットしておくと、より精度の高い回答が得られるでしょう。
利用イメージ1:ChatGPT先生に質問
このセクションでは、ChatGPTに質問し、Blue Prismの開発に関する疑問を解決する例をご紹介します。
事前に、ChatGPTに演出指示をしておきます。カスタム指示機能の入力欄は、以下2つに分かれています。
- より良い回答を提供するために、ChatGPTに何を知ってもらいたいですか?
- ChatGPTにどう対応してほしいですか?
Blue PrismのAIメンターとして回答してほしいので、以下のとおりに設定します。
## Custom instructions
### What would you like ChatGPT to know about you to provide better responses?
- 私は、Blue Prismの開発、保守、運用担当業務をしています
- 業務上での不明点を解消したいと思っています
- Blue Prismは、RPA製品であり、.NETを基盤とします
- Blue Prismの開発者試験に合格しています
- ITパスポートの勉強をしましたが、あまり自信がありません
- 社会人1年目で、新人研修を終えたばかりです
### How would you like ChatGPT to respond?
- Blue Prismの専門家として回答してください
- IT知識も回答に必要な範囲で解説してください
- メンターとして私を勇気づけてください
- 参考サイトがあれば、そのURLも教えてください
さて、RPAロボット内で、入力された文字列の妥当性(例:メールアドレスとして妥当か?)をチェックしたい場面があると思います。ChatGPT先生に質問してみましょう。
正規表現を使用すればよい、とのことです。また、具体的な正規表現も教えてくれました。しかし、情報の正確性を確かめるのは、AI利用者の責任です。教えてくれた正規表現が正しいかどうか、ロボットに組み込む前にテストしたいので、追加質問してみましょう。
いくつかのサイトを紹介してくれました。筆者も実際に使ってみましたが、高機能なオンラインツールだと感じました。これらのツールでテストを行い、正規表現の正確性を確認することが重要です。
今後をみすえて、他の応用例も聞いておくことにしましょう。
正規表現というツールを覚えておくと、今後も役に立ちそうですね。その続きとなる「Blue Prismで正規表現を使用する方法」は、後半セクションの宿題としたいと思います。
最新情報の取得:ChatGPTのブラウジング機能
ChatGPTの知識の深さと広さは非常に印象的です。しかし、ChatGPTは学習時点までの情報しか持たないという限界があります。今日の急速に変化する世界では、最新情報を迅速に取得することが成功への鍵となります。特に、技術分野や業界の動向を把握するには、最新情報にアクセスする必要があります。
以上の点を補完するために、ChatGPTにはブラウジング機能があります。ChatGPTがインターネットを検索し、検索結果をヒントとして参照しつつ、質問に回答するものです。以下は、ブラウジング機能の動作イメージ(筆者作成)です。
ベータ版に対するフィードバックを受け、2023/8/15現在、この機能は一時的に利用できなくなっています。利用が再開されれば、最新情報を容易に検索できるようになるでしょう。
※2023/11/21追記:2023/9/27に機能の提供再開がアナウンスされ、その後利用できるようになっています。
インターネット上には、Blue Prismの開発に役立つコンテンツがあります。公式note、公式ドキュメント、公式コミュニティ、公式DXポータルなどです。ブラウジング機能は、それらのコンテンツを必要に応じ情報源として参照します。また、参照するように、プロンプト内で明示的に指定することもできます。
Blue Prismの開発を支援してくれるものですが、得られた回答に対して、必要に応じて原典(一次情報)を参照しレビューを行いましょう。また、転記をおこなう際には、引用元を明記するようにしましょう。
ChatGPTとBing Chat Enterprise:ツールの選定と活用
2023/7/18、Microsoft社は、法人向けにBing Chat Enterpriseを公開し、Microsoft 365 Business Standardなどのプランで利用可能となっています。
Bing Chat Enterpriseは、ChatGPTと同じエンジン(大規模言語モデル)を採用していますが、別のアプリケーションとして構築されています。個人的に感じた点として、Bing Chat Enterpriseは質問が直訳的であるほど、欲しい情報が返ってきやすい印象を受けます。これは、Windows利用の副操縦士としての役割に焦点を当て、ChatGPTとは異なる方向での最適化が図られているためかもしれません。
Bing Chat Enterpriseは、ChatGPTのブラウジング機能と同様に、インターネットを検索できます。さらに、現在閲覧しているページをインプットにできる便利な機能を持っています。情報の収集や解析において、これらは大きな強みであり、様々な業務シーンでの活用が期待されます。
RPAの開発、保守、運用の現場では、ChatGPTとBing Chat Enterpriseのそれぞれの特性を理解し、最適なツールを選ぶことが重要になります。特に、それぞれのツールの応用範囲と効果的な使用法を把握することで、業務プロセスの効率化を実現することができるでしょう。
利用イメージ2:Bing Chat Enterprise先生に質問
宿題としていた「Blue Prismで正規表現を使用する方法」を、Bing Chat Enterprise先生に教わりましょう。
Bing Chat Enterpriseには、カスタム指示機能がないので、質問中に演出指示も含めています。
インターネットを検索し、正しい回答を生成できているように思います。後述する観点から少し表現を修正し、以下に転記します。
Blue Prismには、文字列に関する機能を提供するビジネスオブジェクトがあり、入力文字列が正規表現にマッチするかどうかの確認もできます。そのオブジェクトは「Utility - Strings」で、その中には「Test Regex Match」というアクションがあります。このアクションは、入力文字列と正規表現パターンを引数として受け取り、入力文字列が正規表現パターンにマッチするかどうかを判断します。結果は真偽値で返されます。
この回答を得るには、プロンプトエンジニアリングと呼ばれる特殊なテクニックを使う必要があったのですが、詳細は本記事の範囲を外れるため省略します。2023/8/15時点での情報ですので、今後は特別なトリックを使わなくても正しい回答が得られるようになることでしょう。
寄り道:AIの普及と情報発信
少し脱線します。AIが普及する時代において、良質な情報を発信し検索可能にすることが重要です。それによって、Bing Chat EnterpriseやChatGPT(ブラウジング機能)が情報を発見しやすくなります。開発者自身も検索エンジンを使って情報を見つけることができます。Blue Prismのエコシステムに関わる人々の情報発信の積み重ねがAIメンターの基盤を築きます。
引用元サイトにアクセスした際には、感謝の気持ちを忘れずに「いいね」ボタンを押すことをお勧めします。
話を戻します。先ほど「今後は特別なトリックを使わなくても正しい回答が得られる」と書いたのは、Bing Chat Enterpriseが、インターネットからこの記事を発見し、先ほど転記した回答を引用すると期待されるためです。残念ながら、筆者には確認手段がありませんが、読者の皆様は実際に確認できるでしょう。
ご参考までに、Bing Chat Enterpriseに聞くべきプロンプトの一例を以下に載せておきます。
Blue Prismでロボットを開発しています。私は「入力文字列が正規表現にマッチするかチェックするために、Blue Prismのどのオブジェクトを使えばよいか」に関心をもっています。正規表現が何なのか、また、具体的な正規表現については既に知っています。回答に必要なら、インターネットを検索して頂いてよいです。日本語と英語の両方で検索すると、情報が得やすいと思います。参考までに、以下サイトを普段から信頼して利用しています。
1. [公式note](https://note.com/blueprism/)
2. [公式ドキュメント](https://bpdocs.blueprism.com/bp-7-2/en-us/)
3. [公式コミュニティ](https://community.blueprism.com/)
4. [公式DXポータル](https://digitalexchange.blueprism.com/)
利用イメージ3:Bing Chat Enterprise先生に質問
このセクションでは、Bing Chat Enterprise先生に「参考書」を提示し、その内容を解説してもらう使い方をご紹介します。
現在閲覧しているページをインプットにできるよう、事前にEdgeを設定しておきます。
開発者が自ら検索して、あるいは、Bing Chat Enterpriseに誘導され、自分の疑問に答えてくれそうなページを発見したとしましょう。もしくは、そうしたページを印刷したPDFが手元にあるかもしれません。それらのコンテンツをEdgeに表示しておけば、Bing Chat Enterpriseに、説明、要約、翻訳などをお願いすることができます。また、コンテンツから読み取った情報を元に、質問に回答してもらうこともできます。
この機能が強力なのは、ログインが必要なサイトや、ローカルPC上のPDFにもアクセスできることです。以下は、筆者社内のナレッジデータベースより、正規表現に関するページをEdgeに表示した状態で、Bing Chat Enterpriseに質問したものです。正規表現について、正しい回答が得られています。
ChatGPTのブラウジング機能のように、AI自身がインターネットを検索する場合、ログインが必要なサイトにアクセスできません。しかし、Bing Chat Enterpriseのこの機能は、AIの利用者がサイトにログインし、ページをEdge上に表示すればよいです。以下の図(筆者の観察結果にもとづき作成)で言えば、ユーザーからBing Chat Enterpriseに対するリクエストの中に、閲覧しているページの情報が含まれるようです。ユーザーが質問欄にページの情報をコピー&ペーストするのと、本質的に変わりません。したがって、Bing Chat Enterprise自身は、検索対象サイトにアクセスする必要がないです。
シンプルながら、応用範囲の広い機能です。たとえば、当社が運営するWebサービスの「パスワードの再発行」ページをEdgeに表示した状態で、メールアドレス入力欄の入力チェックについて、Bing Chat Enterpriseに聞いてみたところ、一見正しい回答が得られているようでした。このような使い方は、Webサイトを自動操作するロボットの開発時に役立つ可能性があります。ただし、Bing Chat Enterpriseは、ページの情報の一部が見えておらず、不足部分を想像で補って回答しているようにも見受けられました。自動化のヒントとして使うだけでも十分便利ですので、開発者自身が回答を検証しつつ、利用するのがよいかと思います。
AIが作成する回答は、必ずしも正しいとは限りません。しかし、それは、人間のメンターであっても同じことです。違いを挙げれば、人間のメンターが常に隣にいてくれることはありませんが、AIメンターは、いつでもそばにいて、開発者の質問に何でも応じてくれるのです。こんなに頼もしいことがあるでしょうか。
AIメンターとともに学ぶ:新しい学びの概念
「聞くのは新人の特権」という言葉が、かつての職場でよく聞かれたものでした。しかし、AI時代に突入する今日、この考え方は大きく変わりつつあります。ChatGPTのようなAIメンターが存在する現代では、新人でなくても、気兼ねなく質問することが可能です。何度でも、どんな内容でも聞いてくれるAIに対して、何も恥じることはありません。
AIは私たちの質問に答え、成長をサポートしてくれる存在です。「質問すること」は、新しい知識を学び、既存のスキルを深化する重要なプロセスで、AIの登場により、誰もが自由に学び、成長する道が開かれました。
AIメンターは、新人の特権だけでなく、すべての人々に対して、気軽に質問し、学び続ける機会を提供しています。これは、個人の成長だけでなく、組織全体のイノベーションと成長にも寄与しているのです。例えば、ある企業では、AIを活用して社員全体のスキルアップを推進し、業績向上に直結させているケースもあると言われています。
まとめ
技術の進化は、古いものを新しい形で再構築する力を持っています。この記事で紹介したChatGPTなどのAI技術は、対話型の教育の復活という形でその力を発揮しています。AIメンターとしてのChatGPTの存在は、初心者から経験者に至るまで、誰もが気軽に質問し、学べる環境を提供しています。その結果、効率的で人間らしい業務の実現がより身近になりました。
しかし、最新情報へのアクセスやAIの回答の正確性など、未だ解決すべき課題も存在しています。最先端の技術を活用しつつ、それらの限界とどう向き合うかは、私たちが追求すべき重要な問題です。
AI時代の新しい学び方を追求する中で、私たちは常に挑戦と成長を続ける必要があります。今後もAI技術と共に、Blue Prismの開発、保守、運用を楽しんで、業務の質を高める道を探っていくことが期待されます。最終的に、私たちの業務はただ効率的であるだけでなく、人間らしく、そして持続可能なものに変わっていくでしょう。AIの力で新しい可能性を開き、未来の業務を共に創造していきましょう。